INTERVIEW

トミーカイラ株式会社 CEO/オートプロデューサー 富田 義一

1945年生まれ。京都府出身。23歳で独立。スーパーカーブームの火付け役であり、のちにチューニングカーの扉を開き、日本の自動車カルチャーを牽引した。1995年、日本初のオリジナルスポーツカー「トミーカイラ ZZ」を発表。2022年9月、「トミーカイラZZⅡ」を展示するサロンを京都にオープン。

誰もやったことがない事をやる。
トミーカイラ × NFTで、
多くの人とつながる未来へ

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伝説となったオリジナルスポーツカー「トミーカイラZZ」の開発はじめ、クルマへの飽くなき情熱で独自の地平を切り拓き続けてきた富田義一氏。そんな富田氏が新たな可能性を見出したのがNFTの世界。自動車としては新たな取り組みとなるNFTライセンス「Tommykaira ZZⅡ Premium NFT Membership」の販売に至るまでの思いとは。富田氏にお話を聞きました。

クルマ一筋に歩んで50年以上

バーチャル育ちのZZⅡをNFTに。
出会いがもたらした新たな挑戦

NFT鳴門美術館の代表である山口大世氏から、NFTライセンスの販売に関する提案をいただいたのは、2022年11月のことです。偶然にもTVでNFTを紹介する番組を見たばかりでしたので、個人的な興味からもぜひ話を聞いてみたいと思っていました。その席で、実車製作や3Dデータの二次利用を可能にするサービスは前例がなく、実現すればどの自動車メーカーもやっていないことだと知り、「よし、やろう!」と即決。

23歳の時、海外のクルマに憧れて海を渡って以来、チューニングカーメーカーを立ち上げたり、理想のオリジナルカーをつくり上げたり、これまでクルマ一筋に本当にさまざまなことに取り組んできました。それらの中には「日本初」といわれるものはたくさんありましたが、残念ながら「世界初」はなかった。だからこそ、非常に心動かされたんですね。まさにガチャっとタイミングがはまった瞬間でした。

また、僕にとって2台目のオリジナルカーである「TトミーカイラZZⅡ (ジージーツー)」を、何らかの形で世の中に届けたいという思いもありました。ZZⅡの実車はまだ世界に1台しか存在しませんが、数年前にプレイステーションゲームの「グランツーリスモ」に登場したことで、その後、世界のいたるところでこのクルマのファンだといってくださる方に出会いました。

実はZZⅡに関しては数年前から市販に向けたプロジェクトが動いていたのですが、新型コロナの影響で止まってしまった。それに変わる方法として、デジタルモデル化は、ある意味ヴァーチャル育ちのこのクルマに適しているのかもしれないという思いもあり、その日のうちにNFT販売を決断。数日後には徳島にあるNFT鳴門美術館に飛んでいました。

トミーカイラサロンは、世界遺産 二条城のすぐそば。
ZZⅡが常時展示されている

眠っている価値を掘り起こす

ZZⅠやチューニングカー、
日の目をみることがなかったアイデアもカタチに

「Tommykaira ZZⅡ Premium NFT Membership(以下、NFT Membership)」はZZⅡのNFTライセンスですが、1995年に220台を販売した初のオリジナルカーZZⅠや、およそ4600台に及ぶチューニングカーなど、私が手がけてきたクルマは膨大な数に上ります。近年では世界、とくに北米を中心に古いチューニングカーブームが起こっており、かつて僕がつくったチューニングカーにも1億円近い値段がついたものがあると聞いています。もしかしたら、それらに関しても今後、デジタルライセンス化の需要があるかもしれません。

クルマの開発では、大量の設計図やデザインを作成し、その中から最終的なひとつの形に絞り込んでいく過程が必ずあります。僕の手元にも3D時代以前に制作した図面や模型などが数多く残っていますが、そのほとんどはボツとなり日の目をみることのなかったアイデアに関するもの。そんな「選ばれなかった可能性」も、何らかの形でいろんな方に見ていただきたいという思いもあります。これらを3Dモデルにすることで、完成したクルマの姿しか見ることができなかったファンの方に、そこに至るまでにありえたさまざまな可能性を感じていただいたり、開発の苦労話なんかもおもしろいかもしれません。

効率よくモノをつくって必要のないものは切り捨てていくのではなく、そこに眠っている価値を新たに掘り起こして楽しみ、再評価していく。こうした流れはNFTならではの魅力だと感じています。

自分が好きなことならきっとうまくいく

「やってみたい」がすべての原動力

NFTやデジタルライセンスに関しては門外漢ですので、「NFT Membership」によって、ZZⅡが今後、どのような展開を遂げていくかを予測することはできません。そもそも僕の場合、クルマづくりはもちろん、先行きを予想して「うまくいきそうだから」という理由で始めたことはひとつもありません。

21歳で手に入れたホンダS600。
当時の中古車市場では、
スポーツカーを置いている店は
日本中探しても一軒もないなかでの出会いだった

僕は3歳で父親を亡くし、母親も兄弟もいないなか、それをバネにすべて自分で即決して人生を歩んできました。へそ曲がりかもしれませんが、人がやったことはしたくない性格だから、今回も一緒。そして、やりたいと思ったら、迷う前に行動するのが若い頃から変わらない僕の信条です。自動車販売会社を設立し、海外のスーパーカーを購入するため単身海を渡った時も、完全オリジナルのスポーツカーをつくろうと決心した時も、先々の予想などまったくしていませんでした。「やめろ」「無理だ」と言われるので、誰かに相談したこともありません。

日本ではじめて輸入された
ランボルギーニ・カウンタックLP400(最初期型)は、
最も思い出に残って
いる1台。
通関すると、新聞社が取材に押し寄せ、
翌日の新聞に大きなニュースとして取り上げられた

決断の時、いつも頼りにするのは、自分が好きなことならきっとうまくいくという、根拠のない確信だけ。もし、損得を考えて行動したり、誰かに意見を求めたりしていたならば、おそらく僕は今、別の場所にいて、ZZⅠやZZⅡはこの世に存在していなかったでしょう。やってみたいという思いに駆られて走り出したその先で、さまざまな人に出会い、いろんな問題に直面し、正直に決断を重ねてきたことが、今につながっています。このプロジェクトにも関しても、そんな気持ちで向き合ってみたいと思っています。

NFTに感じる可能性

築いてきたものを解放し、多くの人とつながる未来へ

もちろん、「NFT Membership」を販売することで、これを使って何かを実現したい方に出会えるかもしれないという期待は持っています。ライセンスで実車をつくることも可能ですので、そんな意志をもった方がいらっしゃるなら、じっくりお話をうかがってみたいですね。もしかしたら、トミーカイラが保有する経験やノウハウを提供し、一緒にクルマづくりに取り組んでいく未来もそこにはあるかもしれません。また、デジタルライセンスを、僕が思いもよらないことに使いたいという方もきっといるはずです。世のなか、どんなアイデアを持った人がいるか分かりませんから。

レーシングシミュレータでは、振動もふくめてZZⅡの走行を体験可能

僕がもしまだ若ければ、こんな風な考えにはなっていなかったと思います。築いたブランドを俺のものだと独り占めするのではなく、オープンにしてみんなで楽しんでやればいいじゃないか。クルマをつくりたいという人がいてもいいじゃないか。そんな心境に、NFTの考え方はピタッとあったんです。会社に例えるならピラミッド型の組織は争いが起きる原因になりますが、NFTはその真逆。全員が株主で知恵を出し合ってそのプロジェクトをよりよくしていく。そこに可能性を感じますし、人の心は世界中、その方向に向かって動いているのではないかと感じています。

これまでの経験から、自分の好きなこと、信じることをやっていれば、共感してくれる人にはきっと出会えるという思いが僕にはあります。ともに汗を流し、問題にぶつかるたびに協力してくれたのは、僕が実現したい夢に共感し、自然に集まってくれた人たちでした。意図的でない思いがけない出会いにこそ、さまざまな可能性がある。そんな気持ちで、これからも一人ひとりとの出会いを大切にしていきたいと考えています。

トミーカイラに乗れば元気が出る、というのは僕が何十年も前に考えたキャッチフレーズですが、それは今も変わりません。この思いは一生貫こうと思っているので、このトミーカイラのNFTで元気が出た、と感じていただけたらこれほど嬉しいことはありませんね。

クリエイティブコラボは、コラボレーショの力で新しいサービスや価値を創造していきます。
日本文化を次世代に継承するプロジェクトや、メタバース・NFTを活用した地域活性、アートと教育など、さまざまな企画を進行中。
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