INTERVIEW

株式会社日立システムズ 相談役(前社長) 北野 昌宏

自ら部員の一人となり、eスポーツ部を立ち上げた北野相談役。「eスポーツを通じて社員同士の会話や雑談の機会が増え、そこから刺激を受けて発想が変わる、ということにも期待してeスポーツ部を立ち上げることにしました」

企業発のeスポーツ部がもたらす、
さまざまな交流。
オンラインならではの無限の
広がりで生まれる「つながり」

将来のオリンピック種目への採用が噂されるなど、とくに海外では高い人気を誇るeスポーツ。日本でも大手企業にeスポーツ部が誕生しつつありますが、そのパイオニアとも言えるのが株式会社日立システムズ。2018年、いち早くeスポーツ部の創部に動いた当時の社長(現相談役)・北野氏にお話を聞きました。

着想から約1か月で創部

「社長とこんなに身近に話せるなんて」と、新入社員もびっくり

今は大分変わったと思いますが、エンジニアには、あまり人と話すのが得意じゃない人や、好きじゃない人も多い。でも、社内、グループ会社、パートナーさんとの会話やコミュニケーションは非常に大事なんです。協業する人たちとの関係を構築して、同じ方向を向くようにしないと、仕事自体がスムーズに進まない。それには会話能力の前に、コミュニケーション力が重要です。そこで考えたのが、集団でやるゲームです。

私自身、若い頃はコンピュータを自作でつくるのが楽しくて、ゲームも当時の人気ゲームが出た時には徹夜で熱中するなど好きだったんですね。今ではオンラインの対戦型ゲームも普及していますし、みんなでゲームを楽しむことで人との交流、自然なコミュニケーションが生まれるのでは?と考えました。社員同士の会話や雑談の機会が増え、そこから刺激を受けて発想が変わる、ということにも期待してeスポーツ部を立ち上げることにしたんです。

準備の着手から創部までは約1カ月。2018年10月に、当社の文化体育クラブの1つとして誕生しました。10名のメンバーでのスタートでしたが、すぐに約40名にまで増えました。世代はかなりバラバラで、最高年齢は私(笑)。世代や役職などに関係なく、全員がフランクに話せる関係性がすぐにできあがりました。新入社員もけっこう入ってくれて、「社長とこんなに身近に話せるなんて…」とびっくりしていましたよ。社員が約1万人いる会社なので、私を間近で見て「社長ってホントにいるんだ…」って(笑)。

国体への挑戦がモチベーションに

共通の目標に向かい、みんなで頑張ることで得られた一体感

実は最初、「2019年の茨城国体をめざそう!」という目標が創部のモチベーションになった部分もあるんです。部を立ち上げた翌年の茨城国体で、初めてeスポーツが関連プログラムの競技として採用されることを知って、「だったらチャレンジしようじゃないか」と。

創部後、主な活動競技に株式会社コナミデジタルエンタテインメントのサッカーゲームである「ウイニングイレブン2019」を採用し、国体出場に向けて練習を始めました。そして半年後、ウイニングイレブン部門の東京都予選に参加したのですが、残念ながら敗退。けれども、共通の目標に向かってメンバー全員が楽しみながらも真剣に取り組んでくれ、一体感のなかでコミュニケーションは間違いなく深まりました。
仕事のあと集まって、ゲームの練習後にはみんなでお酒を酌み交わす。私も含めてフランクな雰囲気の中で楽しめて、それまで社内で関わり合うことのなかった人たちにつながりが生まれたのもよかったですね。部署の垣根を超えて、社員同士の新たな交流が生まれていきましたから。

eスポーツのもつ素晴らしさ

年齢や性別、障害を越えて誰でも参加でき、一緒に楽しめる

今はコロナ禍でオフラインでの活動は制限されていますが、オンラインでの活動はもちろん続いています。なかには「eスポーツ部があったから入社を決めました」なんて言う新入社員もいるくらいで、そこは人事部にもアピールしていますよ(笑)。女性部員も数名いて、eスポーツの社内大会には社員の家族も参加するなどで盛り上がっています。

eスポーツは離れた場所にいるメンバーともオンラインでつながり、一緒に楽しめる点が魅力のひとつです。北海道のグループ会社にいる社員がメンバーに加わってくれるなど、リアルでの部活動では得られないメリットがあります。オンラインで継続して活動できるeスポーツのよさをあらためて知ることにもなりました。

年齢や性別や障害を越えて誰でも参加でき、誰もが同じ条件で楽しみながら、熱く戦える。垣根を越えてコミュニケーションを深められるのは、eスポーツならではのよさでしょう。「ウイニングイレブン」では、たとえばプロのサッカー選手にはリアルではどうやってもかないませんが、eスポーツならプロにも勝てるかもしれない。そういう点でモチベーションが上がるのも夢が持てる話だと思います。

eスポーツが拓く今後

ユニークなコラボで、社会に新たなアクションが生まれる可能性も

それまで企業でeスポーツ部を立ち上げた例がそれほど多くなく、話題性もあって創部後はメディアにも数多く取り上げていただきました。おかげでeスポーツに取り組む他社との交流戦の機会が生まれ、従来なかった新たな企業間交流のスタートにつながっています。

交流戦では他社の社員の方と話をするなかで新鮮な学びが得られることもあります。自社の常識が他社ではそうではなかったり、新しいコミュニケーションが生まれることで得られる知見や刺激は貴重です。社員の働きやすさを促していくための、ルールや仕組みを変えていくヒントにつながるケースも考えられます。

今後はeスポーツのメリットを活かすなかで、いろいろなコラボレーションが実現していく可能性もあるでしょう。たとえば社会人にかぎらず、大学生との交流戦なども、誰もが楽しめて垣根の低いeスポーツのよさが生きるものかもしれません。こうした人的交流を促していくことで、社会の中に新たなアクションが生まれていく。私自身、その可能性を楽しみにしていますね。

地域活性につながる取り組みも
(eスポーツ部部長 杉山 治氏)

社内外のさまざまな交流につながる有意義なツールに

創部から3年が経ちますが、今では若手社員が自らアイデアを出して、主体的に行動してくれるようになっています。社内大会では若手のみんなが企画から運営までを担うなど、前向きに取り組んでくれて頼もしいですね。
社外大会はオンラインで増えており、普段ならまったく接点のない企業との交流が生まれています。当社のパートナー企業も参加してくださり、人的な交流が進んだことで関係性がよりフラットになり、業務面でもよい影響をもたらすことができました。

また、eスポーツを通じて企業だけでなく、長門市様など自治体との交流も実現しています。長門市様のご担当者からは「eスポーツがこんなに面白いものとは知らなかった。またやりたいね」という声をいただいています。いま各地の自治体においても、eスポーツを活用して地域の活性化につなげていく取り組みが生まれています。子どもからお年寄りまで、誰でもどこでも楽しめるeスポーツの長所に自治体も注目しているからでしょう。

たとえば当社では、得意分野であるITやDXで地域活性や地方創生の支援を行っています。新たなにぎわいを地方に創出するために、コミュニケーションの促進やシルバー世代の健康づくり、また子どもの情操教育などを促していく必要がありますが、そこにeスポーツがリンクすることで、新たな価値を提供できるかもしれません。私たちの活動が今後、地域の活性化に少しでも役立てることがあればうれしいですね。