INTERVIEW

NFT鳴門美術館 代表理事 山口 大世

2018年より、本人認証システム事業やブロックチェーンに関するコンサルティング事業などを展開する。NFT時代の到来を見据え、NFTを扱う日本初の美術館「NFT鳴門美術館」を2022年3月にオープン。

美術館のまったく新しい
ビジネスモデルを確立し
「社会性」と「経済性」の
両方を追求する

2022年3月に一般公開を開始した「NFT鳴門美術館」(徳島県鳴門市)。保有証明書や鑑定書付きのデジタルデータである「NFT」を取り扱う日本初の美術館として話題を集めています。「CREATIVE COLLABO」の事業パートナーでもある同館の特色や強み、NFTの可能性について、代表理事の山口氏にお話を聞きました。

日本初のNFT美術館

「NFTを美術館が扱う」と
いう点に新規性と独自性

NFT鳴門美術館は、NFTを取り扱う日本初の美術館として2022年3月にオープンしました。私がこのNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)に注目するようになったのは3年ほど前です。それより以前から、NFTにも使われているブロックチェーン技術に関連した事業を手がけてきたのですが、この先、NFTに対するニーズは間違いなく高まるだろうと感じていました。

一方で、NFTの発行や販売は誰でも容易にでき、事業としての参入障壁もきわめて低いのが現状です。今後、競争がさらに激しくなる業界で、ほかと差別化してNFT事業を展開していくにはどうすればいいのか。思案の末に行きついたのが「NFTアートを美術館で扱う」というコンセプトでした。社会的に信頼性や権威性のある美術館がNFTの販売・流通を手がけることで、付加価値を提供でき、ビジネスチャンスも広がるのではないかと考えたのです。

「鳴門ガレの森美術館」を舞台に、県や市などと何度も交渉を重ねた上で運営・管理を引き継ぎ、「NFT鳴門美術館」と改称してリニューアルオープンに至りました。鳴門市には、民間の美術館では国内最大規模の「大塚国際美術館」もあり、民間発の新しい取り組みが受け入れられやすい風土を感じたことも、鳴門を選んだ理由の一つです。

オープン日には、細田守監督「竜とそばかすの姫」×
ファッションブランド「アンリアレイジ」
コラボ衣装&NFTを展示

一般公開をスタートして以降、まずは幅広い世代の方々に親しみを持ってもらいたいという意図もあり、デジタルアート作品だけでなく、ヒロ・ヤマガタ氏制作の車や原画コレクションなどの現代アート作品も展示しています。今の段階で、デジタルアート作品は展示全体の3割ほどですね。今後、NFTの普及と発展に向けた取り組みに注力しながら、展示内容についてもデジタルアートの比率を高めていく予定です。

NFTの可能性

仮想空間での「自分らしさ」の表現に欠かせないNFT

現時点でNFT鳴門美術館は国内で唯一、NFTの発行、審査、販売、流通が可能な美術館です。NFTとは平たく言うと、「デジタルデータの出所や所有者が誰か」を示す電子的な証明書のこと。従来、デジタルデータはコピーや改ざんが簡単にできるため、誰が「本物」のデータの所有者かはわからず、データ自体に資産価値があるとは見なされていませんでした。これに対しNFTは、ブロックチェーンの技術を使うことで誰が所有者であるかを特定することができ、保有証明書や鑑定書が付いた唯一無二のデジタルデータとなります。

現実世界で私たちは、ブランド品や限定品を集めたり身につけたりして楽しみますよね。この先、仮想空間でも同様のことが日常的に行われるようになるでしょう。なぜなら「人と違うものを持ちたい」「周りからすごいと思われたい」といった人間の欲求は、現実世界でも仮想空間でも本質的に同じだからです。その上、名前や外見で個人を識別しやすい現実世界と違って、仮想空間で「自分らしさ」を表現するには、持ち物で差をつけることがより重要になるはず。その際に、持ち物が本当にその人の所有物なのか、資産価値のある「本物」なのかを証明できるのがNFTであり、ニーズが高まることは必然の流れと言えます。

NFTで重要なのは、安全に発行することができて、偽物や盗難の恐れなく世の中に流通すること。この点で、社会的信用のある美術館は、NFTの発行や販売、流通を担う組織として適しています。加えて、美術館の大きな強みは、作品のNFT化を手がけると同時に、館内の頑丈な金庫で現物作品を安全に保管できる点です。歴史をたどると、かつてユダヤ人は金塊を保管して預かり証を発行する仕組みを作りだし、それが銀行のルーツだと言われています。NFTも同様に、現物作品を預かってNFTを発行することになるため、作品を安全に保管できる金庫の存在は非常に重要になるのです。また、美術館に保管されている美術品は保険料が大幅に安くなるメリットもあります。こうした美術館ならではの強みを活かし、NFTの信頼性を高めながら普及と発展に力を入れていく考えです。

リアルとの連動性が強み

メタバース空間での
作品展示をスタート

2022年6月からはメタバース空間での作品展示も開始しました。ワールド・コラボ・ジャパンの企画運営の下、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターと、AIによる絵画作品を作るCreator’s NEXTと協業しています。

この新しい試みにおいても、現物作品を美術館で保管・展示できることは、大きな利点となっています。というのも、例えば誰もが知るような有名な絵画作品であっても、「メタバース空間で展示している」というだけでは、単にコピーを並べているのと変わりません。そうではなく、現実の美術館で実際に展示・保管されている作品を、メタバースのギャラリーでも同じように見ることができるのなら、意味合いはまったく変わりますし、仮想空間での鑑賞体験に大きな価値が生まれます。今後もメタバース上でさまざまな展示企画を実施し、個人ギャラリーの提供などにも拡げていく計画です。

「SHINSEI GALVERSE」とのコラボイベントも展開。
80年代のアニメをモチーフにした
NFTコレクションは海外コレクターからも人気

NFTを軸として、引き続きいろいろな企業や団体様との連携の可能性を探っていければと考えています。NFTに関心を持たれる企業様は非常に増えていますが、「話題のNFTだから何かやってみよう」という漠然とした方向性ではどこかで行き詰まってしまいます。時代の潮流を先まで予測し、なおかつNFTの本質をしっかりと踏まえながら、新たな価値を生み出すようなコラボレーションを図っていきたいと思っています。

新たな収益構造を追求

ビジネスモデルを
根本から見直し、
持続可能な美術館に

美術館や博物館は、人類が蓄積してきた文化や歴史を未来に継承する社会的な使命を担っています。しかし一方で、一般的に運営費用の60〜70%は国や自治体からの助成金でまかなわれ、もともと歳入の20〜30%にとどまっていた入場料収入はコロナ禍でさらに落ち込むなど、ビジネスモデルとして成り立っていないのが現状です。社会性だけでなく経済性も追求しながら美術館・博物館が事業を持続していくには、新しい収入源を確保することが不可欠です。NFT鳴門美術館がNFTやメタバースでの展示など、従来の美術館がしてこなかったサービスを次々に展開しているのはそのためです。

「Naruto Museum Pass」は、展示イベントや
クリエイター支援の
プロジェクト参加、
NFTの優先購入権等、様々な特典を用意

今後の計画としては、クリエイターやアーティストの作品のNFT化やグローバル展開を支援するプロジェクト等にも注力していきます。それらのプロジェクトへ参加するためのチケットとなる「Naruto Museum Pass」の販売もすでに始めています。このパスを持つ方々には今後「NFT MUSEUM MEMBERS」を追加で付与し、将来的には全世界の美術館NFTへアクセスできるようにする予定です。

美術館の収益構造を根本から考え直し、ビジネスとしてきちんと成り立つようにする。それは結果的に、美術品や遺物を後世に残すという社会的使命を、将来にわたり果たし続けることにつながります。NFTを活用した「MUSEUMU3.0」という新しい美術館・博物館のあり方を、ここNFT鳴門美術館から世界に向けて提案し、全世界のミュージアムを一つにつなぎながら可能性を広げていきたいと考えています。