INTERVIEW

株式会社ZOZOテクノロジーズ サービスデザイン本部 本部長
クリエイティブディレクター
大久保 真登

サービスデザイン本部は、「ZOZOTOWN」「WEAR」など各種プロダクトのUI、UX、プロモーション、サービス全体のブランディングに従事。「FAR」は、大久保氏を中心に4名で企画制作を担当。

若手クリエイターに
チャンスの場を提供したい。
ZOZOが創刊した
ビジュアルマガジン
「FAR(ファー)」とは

日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」をはじめ、様々なサービスの企画・展開等を手がける株式会社ZOZO。昨年からはZOZOらしさを表わす言葉として「ソウゾウのナナメウエ」をかかげ、事業成長とカルチャー発信を両輪で推進。この6月には新たな取り組みとして、クリエイターが自由に発想し表現するビジュアルマガジン「FAR(ファー)」を創刊。その背景や反響などについて、大久保氏にお話をお聞きしました。

創刊のきっかけ

ZOZOを好きでいてくれる人に、よりZOZOを好きになってほしい

一般的に、会員向けサービスとしてゴールドやプラチナといった会員ランク制度がありますが、ZOZOではこれまであえてそういったランク等は設けていなかった一方で、「ZOZOをずっと使ってくれている人たちに向けて何かアクションをできないだろうか、よりZOZOを好きになってもらえる方法は何だろうか」と考え、会報誌を作ろうと思ったのが発端です。

ただ、定期的に送られてくるいわゆる「雑誌」のようなカタチは自分自身の経験上じっくり読むことも少ないし、そのまま捨ててしまうことも多い。せっかく作るなら、部屋に飾ったり、インテリアにもなったりして、その人の生活の一部として身近に感じられるようなもの。雑誌ではなくアートに近い位置づけとなるようなプロダクトの性質を持たせようと思い、毎号テーマだけを決めて多様なクリエイターに自由に発想し表現してもらう、文字のない雑誌を創刊することにしました。

ビジュアルマガジン「FAR(ファー)」は、B4判・32P。
ロゴは、Rの部分に地点を見定めるピリオドと、これでいいのかというクエスチョンを足し合わせた造語的なあしらいに。次号は、年内発行を検討中。

FAR(ファー)に込めた思い

人間って、不確かなものを考えるとき、遠くを見つめますよね

参加してくれたクリエイターは、ヘアメイクアップアーティスト、スタイリスト、フォトグラファー、イラストレーター、画家など様々。普段は表立って活動していない人やネットなどいろいろなチャネルでじわじわと話題を集めている人など、社内で意見を出し合い決めていきました。 ビジネスとしてのクリエイションには、大前提としてクリエイター個々に求められる役割がありますが、「FAR」にはお題もなければ目的設定もない。「テーマだけをもとに自分の創作活動を表現してください」とお伝えしました。極力規制の少ない中で、想像力だけを問いかける、ある意味では一番難しい仕事です。だからこそ、オリジナリティのあるものになると思いました。

この考えはネーミングにも表れています。答えは常に目の前にあるものではないから、不確かな未来を想像しながら創造しないといけない。人間って、はっきりとしないものを考えるとき、遠くを見つめますよね。この先どうなりたいかも視線の先、遠くにあると思うんです。表現の過程と言葉の意味が合うのではと思い、“遠くへ”という意味で「FAR」とネーミングしました。
もうひとつ、企業としてのメッセージもあります。3月18日にZOZOTOWNを大規模リニューアルし、これを機に、新しいZOZOTOWNになっていかなければならない。売上だけではなくブランディングも含め、この先どうなっていきたいのか、遠くを見て改めて考えることが大切だと。「FAR」という言葉は、ZOZOという会社にも合っていると思って選びました。

創刊号のテーマは「FACE」

「FARがほしくて注文したけど手に入らなかった」
裏を返せばポジティブ、期待以上の反響に

当初、創刊はZOZOTOWNのリニューアルと、コスメ専門モール「ZOZOCOSME(ゾゾコスメ)」のオープンに合わせた3月の予定だったこともあり、テーマはコスメとも親和性のある「FACE」としました。デザインはクリエイターに一任すると決めていたので、ZOZOとしてこだわったのはコンセプトと紙面サイズです。ZOZOTOWNでの購入商品と一緒に配送することを前提に、A4だと購入商品と混ざってしまうし、A3にすると発送コストの問題や箱が限られてしまう。配布は約10万人でしたので、多くの購入者へ届けることと、手にしたときのインパクトを重視し、B4判としました。

創刊後、クリエイターの人たちからは、シンプルすぎるお題に悩みながらも「ふだんはこんな仕事はできない。やっていて楽しい」という声や、第2回も参加したいという声もいただきました。クリエイター側からこのような反応いただき、幸先のいいスタートとなりました。
ユーザーの反応は、ネットで見ていると「FARがほしくて注文したけど手に入らなかった」「3回注文したけど手に入らなかった、ZOZO嫌い」など(笑)。ランダムで数量も限られた配布だったので申し訳ない気持ちもありましたが、こういった意見も裏を返せばポジティブなものだととらえています。興味を持ってくれたからこそかなと。期待以上の反響でした。

それと、フリマアプリでも1,000円、1,500円で「FAR」が結構売られていたんです。約10万人に配って、その人たちが2次流通に回してくれたことで、プラスワンの読者になってくれている。当社がアクションした範囲以外にも広がりがあったのは嬉しかったですね。

クリエイターに関する今後の事業展開

プラットフォーマーとしての価値を提供。
若い人たちを応援する構図を作っていきたい

ZOZOはファッションを大切にしている会社です。その「ファッション」を好きになるのは、10代、20代の青春真っ盛りの頃だと思うんです。そういった意味では、「FAR」しかり、これからやろうとしている事業も若い人たちにどれだけ関心を持ってもらえるか、という点をふまえてサービスを考えていきたいですね。「FAR」も、若いクリエイターのチャンスの場になればいいと思っています。
約10万部を配布する雑誌はなかなかありませんから、店頭に置くより購入した箱の中に入っているほうが、確実にユーザーとの接点になる。自分の作品を見てもらうにはいいメディアになると思いますし、それがZOZOがプラットフォーマーとして提供できる価値ではないかと。若い人たちを積極的に応援する構図を作っていきたいですし、結果的に若者にとってのカルチャーを生み出すような環境になっていけばと思っています。

また、現在ZOZOTOWNトップページのバナービジュアルにイラストレーターを起用していますが、今後、公募のような形で若いクリエイターにチャレンジしてもらうのも面白そうだと思っています。私たちがプロモ―ション目的でバナーを作るより、かわいいイラスト等を使って作る方が、見ているユーザーも楽しいはず。ZOZOTOWNには年間973万人を超える購入者がいて、たくさんの人の目に触れる機会があります。若いクリエイターの人たちが自分の表現のためにバナーを作って、例えば、それを見つけたブランドさんが「このイラストが魅力的だから、うちでTシャツ作ってみませんか」と声をかけて、ブランドとの接点が生まれるなど、そういうつながりを作っていければいいですね。

クリエイションの意識

初めから10倍、100倍で考える方が、自分が届けたいモノが作れる

100人に何かを届けるためのデザインは案外簡単にできると思うんです。しかし届けたい人の人数が、1万人、10万人となると急に見えなくなってしまう。ですから、クリエイティブなアイデアを考える時は、自分が今チャレンジしようとしているものに対して、届けたい人数に0を1つ、2つ足した、より多くの人のことまで想像して考えるようにしています。
ZOZOでサービスを作ってきたこれまでも、1万人より100万人にヒットするものを考えようとしたときの方が、結果としていいアウトプットができました。100万人で考えた結果、届くのはせいぜい1万人ほど。1万人で考えたものは100人とか1,000人にしか届かないこともあります。クリエイションを考える上で、届けたい人数に対して10倍、100倍に拡がった世界を想像することで、自分が届けたいモノが作れるのではと思っています。