INTERVIEW

有限会社 AS Real 代表取締役 藤田 陽介

ブレイクダンスに打ち込んだ10代を経て、香港と上海で計2年生活したあと、帰国後の2004年に会社を設立。先端技術を用いたソーシャル領域でのコミュニケーション開発を軸に事業を展開している。

先端テクノロジーを駆使して
目指すのは
生き方や働き方に
より多くの選択肢がある未来

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日本語で指示を出すとAIが自動でコードを書いてくれる「AI Programmer」や、“嘘をつかない”自然会話AIを作成できる「Nolie」など、先駆的でユニークなサービスを世に送り出してきた有限会社AS Real(アズリアル)。「CREATIVE COLLABO」のパートナー企業でもあります。代表の藤田陽介氏が20代で起業した経緯や、これまでの歩み、テクノロジーを使って実現したいこととは。お話を聞きました。

20代前半で起業

海外生活を経て、日本での勤務経験ゼロで会社設立

僕が代表を務めるAS Realは、Web3やAI(人工知能)をはじめとする先端技術を用いて、ワクワクするテクノロジーで社会課題の解決を目指して活動している企業です。今から20年前、20代前半で会社を立ち上げたときは、実は明確にやりたいことや志があったわけではありません。それまで企業に勤めた経験は一度もなし。自分を雇ってくれるところなんてないだろうから、だったら自分でつくろう、という発想です。

中学1年でブレイクダンスを始めて以降、学校で過ごすよりも、ダンスを通じて知り合った大人たちと過ごす方が断然楽しいと感じていました。世界一になることを目指して10代はずっとダンスに打ち込み、その一方で「このまま続けていいのだろうか」と次第に迷いも生じていました。ちょうどその頃、池袋の路上でダンスをしていて、たまたま通りかかった香港人のグループと仲良くなったんです。

身振り手振りでやりとりする中で、その一行が香港の芸能事務所の社長と所属タレントたちだとわかりました。社長から香港に来ないかと誘われて、日本を旅立ったのが21歳のときです。当時の香港は返還から間もない頃でインフラもまだ十分に整わず、居候させてもらったスタッフの家は2LDKに家族5人が暮らし、お湯も満足に出ない。カルチャーショックでしたね。香港滞在中の約1年間、その事務所でタレント活動をし、テレビやCMにも出演させてもらいました。

いったん日本に帰ったあと今度は、幼馴染の友人が住んでいた上海へ渡りました。急速に発展する上海の空気感を肌で感じてみたい、というのが一番の動機で、実際に街も人も活気とエネルギーに満ちていました。上海では友人たちとクラブイベントを運営したり、現地の高校のダンス部で教えたりと、ここでも1年ほど生活。そして再び帰国したあと、日本での勤務経験ゼロの状態で、この会社をつくったんです。

激動の海外生活から帰国後、As Realを設立

会社設立からの道のり

人との出会いに支えられ、紆余曲折の20年

起業した時点で、漠然とインターネット関連の仕事をやっていきたいと考えていました。10代の頃からパソコンが好きで、自分でホームページをつくったりファイル共有ソフトを使ったりと親しんできたからです。ダンスの経験を活かして最初に取り組んだのが、ダンスに特化したポータルサイトの立ち上げです。動画配信をメインに、ダンスに関する情報やブログも盛り込んだ内容で、独学して自前でサーバーも構築。半年後には月間500万PVを記録するようになり、広告収益も得てサイト運営は軌道に乗りました。このほかにも、見放題の動画配信サイトをつくったのもこの頃です。当時はまだパソコンで映像を見ることが一般的ではありませんでしたが、この先、動画の需要は必ず伸びるし、インターネットのあり方も変わるはずだという予感がありました。

スタートは順調だったものの、そこから現在までの20年は山あり谷あり。途中の3年ほどは会社として何も活動をしていない空白の年月もあります。直前に手がけていた事業がうまくいかずに借金だけが残り、仲間も去って1人になった時期です。このときにお世話になったのが、知人を介して知り合ったある経営者の方で、その人の会社でデスクをお借りして仕事をさせてもらうことに。ところが最初に任された案件で大失敗してしまったんです。広告運用で大きなミスを犯し、予定していた日に広告が配信されないという大事故に。それでも社長は僕を責めることなく「大丈夫、大丈夫」と笑ってくれて。陰で対応に奔走してくれていたことを後で知りました。

この出来事は、仕事への姿勢が根本から変わる分岐点だった気がします。それまでは自分がやりたいことを何となくやっていたのが、目の前のこの人の役に立ちたい、信頼に応えたい、という思いで仕事をするようになった。その方が自分はがんばれるし、何より楽しいと気付いたんです。それから3年後、開発したいサービスのアイデアが浮かび、社長のもとを離れて自社の業務に専念することを選択。1年半をかけて、インスタグラムやツイッター(現X)のハッシュタグ収集キャンペーンの運用管理ツール「TWO GOOD」を開発し、会社の第二章が始まりました。再出発を支えてくれた恩人である社長には今も感謝しています。

AS Realが提供するサービス

生成AI特有の“扱いにくさ”を解決する新サービス

AS Realではソーシャル領域でのコミュニケーション開発を軸に、これまでさまざまなサービスを手がけてきました。開発の出発点はいつも、「この新しい技術を使ってみたい」「こういうものがあれば面白いんじゃないか」という探究心やひらめきです。その典型が2022年10月にリリースした「AI Programmer」です。日本語で指示を出すとAIが自動でソースコードを生成してくれるツールで、GPT-3を使って2~3時間で作り上げました。当時は類似のものがなかったことからメディアでも取り上げられて反響がありました。

とはいえ僕たちからすると、GPTを活用しただけで技術的に何ら難しいことはしていないので、反響の大きさには戸惑いもあって、講演依頼が来ても断っていたんです。今思えば、GPTをどう活用するか、というところで着眼点や発想に独自性があり、ひらめきをカタチにできた。そこを誇っていいのだと気付きました。日本語でやりとりができるChatGPT(GPT-4)がある今は、「AI Programmer」の役目は終わったと言えます。それでも、どこよりも早く技術を使って実用的なツールを出せたことに意味があり、周りからの反響を振り返っても、開発してよかったと思います。

ChatGPTの登場を機に一般にも広く知られるようになった生成AIですが、AS Realでは2019年発表のGPT-2の頃から関心を寄せ、「これを使って何ができるだろう」と試行錯誤を重ねてきました。その過程では、生成AI特有の「実在しない情報や事実も生成してしまう」「答えが毎回同じではない」といった課題にも早くから目を向けていました。こうした課題を解消し、生成AIをビジネスに活用するハードルを下げたいと開発したのが、2023年4月にローンチした「Nolie(ノリエ)」です。

これは自社専用の嘘をつかない自然会話AIを簡単に作成できるサービスで、限定された専門知識をインストールすることで、信頼性と正確性の高い情報提供を可能にしました。社内外での情報共有や顧客対応の効率化、自社サイトへのAI導入など用途は幅広く、最近では自動車メーカー様の新車発表で活用いただくなど、多くの企業様に導入いただいています。これまで「AI Programmer」をはじめ、AIを使ったいろいろなサービスを実際に作り、知見を蓄積してきたからこそ、課題解決への技術的なアプローチができたのだと思います。

AS Realのこれから

先端テクノロジーへの探究心を原動力に、“新しい自由”を模索

現在約15名の体制となったAS Realには、システム開発や動画制作といったオンラインの領域だけでなく、リアルイベントの企画・運営を得意とするメンバーも在籍し、オンラインとオフラインをハイブリッドで網羅的に担えることは大きな強みになっています。加えて最新テクノロジーのキャッチアップの早さにも自信があり、生成AIにしてもブロックチェーンにしても、世の中で注目される何年も前から手掛けてきたからこそ、今いろいろな企業様に声をかけていただけています。

自社サイトには「Logical thinking Creates new freedom」というメッセージを掲げています。一過性のトレンドにとらわれずに社会を冷静に捉え、論理的な思考と柔軟な発想で、ものづくりを通して新たな自由を生み出していく集団でありたい、という思いを込めています。「自由」の捉え方は人によっていろいろだと思いますが、僕が思い浮かべるのは、人が生きていく上でできるだけ多くの選択権がある世界ですね。生き方や働き方の選択肢が多いほど、人はより自由でいられるんじゃないかと。

その観点でいま個人的に一番関心があるのが、環境です。衣・食・住やエネルギーも含めて、自分たちでまかなえるような環境をつくることができれば、自由に一歩近づく気がしませんか。家族や会社といった小さなコミュニティが自活できるような環境づくりを、AIなどのさまざまな先端技術を活用して実現できたら面白いですよね。今は突飛なアイデアに聞こえるかもしれませんが、10年後にはそれが現実になっているかもしれない。そのときどきの新しいテクノロジーを駆使しながら、「面白そう」「やってみたい」という探究心のままに進み続けたいと思います。

信頼できるメンバーと今後も新しいテクノロジーを
ビジネスに活用していく

クリエイティブコラボは、コラボレーショの力で新しいサービスや価値を創造していきます。
日本文化を次世代に継承するプロジェクトや、メタバース・NFTを活用した地域活性、アートと教育など、さまざまな企画を進行中。
一緒にコラボしたいクリエイター、企業の方、ぜひお気軽にエントリー&お問い合わせください。