INTERVIEW

クラスター株式会社 取締役COO 成田 暁彦

サイバーエージェントでネット広告営業や新規事業立ち上げを経験後、子会社のCyberZで広告部門の営業統括および、企画マーケ部門、海外支社の責任者を兼務。2019年10月よりクラスター株式会社に参画し、2020年9月に取締役就任。

現実ではありえない演出も
自由自在に。
バーチャル空間で加速する
無限の創造性

昨今注目を集めるインターネット上の仮想空間「メタバース」。このメタバースのプラットフォーム「cluster(クラスター)」を開発・運営するクラスター株式会社は、バーチャルイベントを手がける業界のトップランナーです。「CREATIVE COLLABO」のパートナー企業でもある同社の事業の特色や、バーチャルの可能性について、取締役COOの成田氏に聞きました。

clusterとは

バーチャル空間に人が集って遊べる
メタバースプラットフォームを提供

私たちクラスターが開発・運営する「cluster(クラスター)」は、ユーザーがアバターを介してバーチャル空間に集い、イベントに参加したり、友達とコンテンツを楽しんだりできるメタバースプラットフォームです。clusterの特色の一つが、PCやVR機器だけでなく、スマートフォンからでも手軽に利用できること。イベントによって多少の違いはありますが、平均すると、スマートフォンからのアクセスが7~8割を占めています。

ユーザーはcluster上に自分で空間やイベント、ゲーム、アバターなどを作って楽しむこともでき、すでに数千人がクリエイターとして日々コンテンツを投稿し活動中です。こうしたBtoC事業と並行して、BtoB事業にも力を入れています。具体的には、企業さまからイベントを受注し、ご要望に応じてオリジナルの会場、アバター、演出などを企画し制作。配信スタジオ運営などのオペレーションも含め、ワンストップでご提供しています。

これまでの一例を挙げると、スマートフォンゲーム「ディズニー ツイステッドワンダーランド」の世界をバーチャル空間に再現したハロウィンイベントや、ポケモンのバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」などの制作運営を手がけてきました。このほか採用セミナーや新入社員内定式、登壇イベントなどにもclusterをご活用いただいています。

cluster サービスリリース後の累計総動員数は800万人を超えました。世界屈指とも言えるこの実績を通して技術・ノウハウを磨いてきたclusterは、バーチャルイベントに関して随一のシステムを誇っています。

clusterの強み

クオリティの高さと操作のしやすさ
両方を追求したCG技術に定評

clusterの最大の強みが、3DCGの精度・品質の高さです。例えば2020年5月に公開した渋谷区公認の「バーチャル渋谷」では、渋谷の街並みをcluster上に細部まで忠実に再現。スクランブル交差点の何百個もの看板や広告は一つひとつ手作業で埋め込み、地面には渋谷のアスファルトの写真から作成したテクスチャを貼り付けています。聞こえてくる雑踏音も、実際に渋谷の街で収録したもの。誰が見ても「ここは渋谷だ!」と感じてもらえるバーチャル空間になっていると自信を持っています。

一方で、3DCGの精度や品質をとことん突き詰めれば良いのかというと、そうでもないのです。CGを作り込み過ぎて、スマートフォン上で表示が遅くなったり、固まったりするようでは本末転倒になってしまう。精度や品質を保ちながらも、できるだけデータを軽量化して操作性を良くする工夫を凝らしています。

来場者がより快適にイベントを楽しめるよう、運営面でのノウハウも磨いてきました。例えば、バーチャルイベント会場に入ったら真っ先に、視界に操作説明の案内ボードが現れるようにする。これで、よりスムーズに不安なくバーチャル空間に入り込むことができます。加えてイベントの進行台本にも、操作に関するアナウンスを適宜盛り込んでいます。こうした来場者の視点に立った細かなフォローは、リアル・バーチャルを問わず、イベントを楽しんでいただく上で大切な点だと考えています。

オフィス内にはトラッキング体験ができるスタジオを完備

バーチャルだからできること

思い描く世界を
バーチャルで表現
同じ空間に「集まる」
体験を可能に

コロナ禍を機に、Web会議ツールを使ったミーティングやセミナーが浸透しました。そうしたオンラインイベントと、cluster上で開催されるバーチャルイベントとの一番の違いは、clusterは「集まる」という体験を提供できる点です。Web会議の場合、参加者は各自のPCの前にばらばらに存在し、特にセミナーでは、話を聞くだけの受け身の状態になりがち。それに対しclusterは、アバターを介して自身がバーチャル空間に入り込むため、ほかの参加者と同じ空間に集うことになります。空間内の好きな場所を能動的に動き回り、隣にいる参加者や講師と言葉を交わすことも可能。どの場所に人が多く集まりにぎわっているのかがひと目でわかるのも、アバターの存在があるからこそです。

メリットの二つ目は、現実にはありえないような体験が、バーチャル空間なら可能になるということ。例えばオフィス内で花火を打ち上げる、巨大な社長を登場させる、といった演出も自由自在です。単に奇をてらったことをするのでは決してなく、イベントの目的に沿って、来場者に伝えたいこと、表現したいことを、バーチャルならではの演出方法でかたちにすることができるのです。イベントを開催した企業のかたから「長年やりたくてもできずにいたことをバーチャルで実現できた」と感激していただけることも。

企業さまにとってのメリットをもう一つ加えると、バーチャル採用イベントなどが特にそうですが、新規性の高い取り組みに積極的な企業である、という姿勢やメッセージを参加者に伝えられるという点です。近年、新規事業立ち上げや新サービス・商品の創出に関心を寄せる就活生は増えています。バーチャルイベントを通して、新しいことにチャレンジしやすい企業風土を感じ取り、イベントだけでなく開催企業に対しても興味関心や好感度が高まることが期待できます。

バーチャルの未来

クリエイターが創造的に活動し
なおかつ稼げるバーチャル空間に

この先の未来では、リアルとバーチャルの境界線がどんどん曖昧になり、同時に、バーチャルで解決できるものの比率が徐々に増えていくと予想します。この「境界線が曖昧になる」という感覚を、最近になって私自身も体感しています。オフの時間に自宅でシューティングゲームを楽しんでいて、ゲーム内でチームを組む会社の同僚と、ゲームのキャラを介して仕事の話の続きを何気なくしていたりする。日常の延長線上の感覚で、ことさら区別することなく二つの世界を行き来しています。

そうしたリアルとバーチャルの境目が薄れていく近い将来に、clusterを通して私たちが実現したいのは、3DCGのコンテンツを生み出す世界中のクリエイターが“稼げる”バーチャル空間を創ること。具体的には、ゲームクリエイターが課金アイテムを自由に制作・販売できる機能や、アバターを売買・レンタルできる機能を追加していく予定です。YouTubeが個人での動画制作や配信に変革をもたらしたように、同様のことが3DCGコンテンツにも起きるでしょう。メタバースの中にクリエイターの経済圏が形成されることで、クリエイターやユーザーの自由な創造力・発想力が次々に実を結び、私たち運営側も意図しない発展をしていく可能性があります。

この先、技術が日々進展し、通信環境やデバイスのスペックも向上してく中で、3DCGやバーチャル空間で表現できることの幅は確実に広がっていくはずです。ますます盛り上がるメタバースの領域に、ぜひ多くのクリエイターの皆さんに加わっていただきたいですね。私たちがcluster上に創造の材料となるものをさらに豊富に用意し、それによって人々のアイデアがどんどん膨らんで創造力が加速し、より良いものに仕上がっていく。そうしたコラボレーションをこれからも数多く実現できればと考えています。


CREATIVE COLLABO メンバーよりひと言

(VR consulting Div. 担当マネジャー)

海外ではオンラインとオフラインの主従関係はすでに逆転現象が起きています。日本ではまだその領域に来ていませんが、近い将来、コミュニケーションのベースはオンラインであり、信頼獲得に向けた顧客との接点がオフラインという位置づけになるといわれています。つまり、常にオンライン上でコミュニケーションが行われ、オフラインという概念がなくなるということです。
そういった意味合いで、VR空間は今後、コミュニケーション手段のスタンダードになる可能性が高く、今はその変革期のスタートを切り、加速を始めた段階だと感じています。空間の使い方やコミュニケーションの取り方などVRを経験し、次のステップへ進むための考え方を持つ企業と、主流になってから考える企業では、事業・営業戦略などにおいて大きな差が出ることは容易に想像できます。

現在、VR空間の活用事例として、内定式や入社式、セミナー、表彰式といった社内イベントがあげられます。導入理由の多くは、遠方でリアル会場への参加が難しい、新型コロナウイルス対策として「リアル→オンライン」という傾向にありますが、2022年以降はVRでなければできないこと、できない体験が空間利用の判断基準になると思われます。

一例ですが、コロナ禍前の学生生活では、授業がなくても大学に行ったり、学食で仲間と話をしたり、学生の生活の一部として大学は機能していたと思います。この「生活の一部」という面が非常に重要なポイントです。デバイスの進化も必要なファクターですが、2~3年で技術面が追いつき、映画の未来描写が気がつけば現実となり、さらにVR空間の利用シーンは加速していくでしょう。
弊社では、変化する社会によりフィットしたVR空間の活用方法をclusterさんと共に考え、新たな価値創造とクリエイティブ業界の発展に力を尽くしていきたいと考えています。